REPORT レポート
text:石井美智子 photo:田中利昌他
 

 
 心が海に乗り出すとき、新しい言葉が筏を提供するーヨハン・ゲーテ

 この詩の一節は、塩見直紀さんの著書『半農半Xという生き方』の冒頭にも掲載されている。新しい社会をイメージするときには、新しいコンセプトを表す言葉が必要となる。それがまさに、「半農半X」という言葉なのだろう。

桜が満開となった4月1日、トージバ、ナマケモノ倶楽部、カフェスローのコラボレーション企画第二弾として「半農半Xの種をまこう!Vol.01」が開催された。小さな農のある持続可能な暮らしをしながら天職(=X)を全うしていこうという「半農半X」を提唱している塩見直紀さんをゲストに迎え、「半農半X」にたどり着いたいきさつ、ご自身のライフスタイル、今取り組んでいることなどを具体的に話してもらった。とにかく塩見さんの話からは、キーワードとなる新しい言葉がおもしろいようにぽんぽんと飛び出してくる。イベントの冠になっている「半農半X」しかり、自分のXを発揮しあう社会を目指す「使命多様性」、75歳以上のおじいさんおばあさんの話を月に一回聞きに行くという「村の光カフェ」など、言葉の持つ力に圧倒される。




 トークの途中、会場に集まった約100人に、ワークシートに叶えたいXを8個書き出してみようと勧める塩見さん。100人が8個ずつXを書き出せば、今日のイベントだけで800個のXのあり方が見えてくる。自分の叶えたい夢を文字にすることで、一人一人の顔が輝き出す。みんなの中に、半農半Xの種が蒔かれた瞬間だった。最後に「Xを1万種類ほど集めたいですね」と笑う塩見さん。しかしきっと、そう遠くない将来にXの数は1万を超えることだろう。人の数だけ、Xがあるのだから。





 そして伊豆で半農半リトリートを実践している野見山文宏さんのトークへ。銀行員時代に過労で倒れてからスローな生き方を模索しはじめ、東洋医学、環境問題などを学んでいったという野見山さん。「病気でコンセントを抜かれていったん強制終了したんです。空っぽになることで、大事なことが見えてきた。空っぽだったからこそ、『半農半X』にピンときたんです」。その後は希望者に「息がつなぐココロとカラダ」をテーマにしたボディワークショップを行い、自らの経験から得た知識や技術をXにして、伝えてくれた。







 ライブにはマヤ・ラミスさんが登場。昨年まで自宅の裏山に畑をかり、友人と野菜を育てていたというマヤさんは、農を通して初めて雨の恵みにとても感謝したという。ほとんどアカペラで『五木のこもりうた』などの民謡を歌うその姿に、その声に、大地に根ざしたエネルギーを感じた。それからトークは旧暦の手帳を制作しているLUNAWORKSの高月美樹さんへ。女性と月の関係や、農と旧暦の密接な関係をわかりやすく説明する中で、「半農半Xではないですが、半旧暦半グレゴリオ暦で生活すると、日常生活で感じる不自然さがリセットされるのではないでしょうか」という言葉がとても印象的だった。














 都会で暮らす都市生活者が半農半Xを実践するのは、なかなか簡単なことではない。しかし、今回のイベントに集まった人たちの心には、「半農半Xって意外と難しくないんだ」という思いが少なからず芽生えたことだろう。
Xは、いつも自分の中にある。
次回の「半農半X」のイベントには、さらに多くの実践者を迎える予定だ。